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棚田学会
Rice Terrace Research Association

                  棚田学会賞 

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棚田学会賞
第15回石井進記念棚田学会賞(平成30年度)
1.授賞者
(1)IFUGAO STATE UNIVERSITY(イフガオ国立大学:フォリピン共和国イフガオ州ラムット)
(2)上岡満榮、上岡淳恵(愛媛県喜多郡内子町)

2.業績名及び授賞理由
(1)IFUGAO STATE UNIVERSITY
業績名:Ifugao Rice Terraces: Conserving Our Heritage Site (イフガオの棚田:我らが遺産地域の保全)
授賞理由:ルソン島北部イフガオ州の棚田群は、ユネスコの世界遺産並びに国連食糧農業機関の世界農業遺産に登録されながら、社会経済の近代化に伴い農業後継者の減少、先祖代々引き継がれてきた棚田耕作の知識の断絶など、広範囲に崩壊の危機に瀕するユネスコの危機遺産に指定されており、その規模の大きさゆえにこれを持続的に保全するための抜本的な仕組みづくりが求められ、模索されている。
 そうしたなかイフガオ農林業大学は、2009年に共和国法第9720号によりイフガオ国立大学に改組昇格した際に、棚田に係る先住民の知識の教育と研究が大学の設置目的の一つに据えられ、同大学はイフガオ州の棚田と先住民の知識継承のリーディング高等教育機関として活動を開始した。まず、大学全体の取り組みとして学部生向けに棚田耕作等の知識を講義するためのカリキュラムを開発し、講義で使用するワークブックを出版するとともに、全16コースで同講義を必修とし、修士課程で3コース、博士課程で1コースが設置され包括的な教育体制が構築されている。また、当地の関連諸大学に呼び掛けて先住民の環境保全の取り組み等を紹介する大型本を出版するなどの出版・編集活動を継続している。さらに、棚田と先住民の知識に係る諸領域の調査研究に予算を計上しこれまでに23編の調査研究報告書が公開されたほか、「イフガオ棚田マイスター・トレーニング・プログラム」による人材育成を行い修了の要件として論文審査を課し、これまでに18編の論文が執筆され公開されている。
 本地域の広大な棚田の保全には、十分な財政力を確保できていないイフガオ州を多くの関連セクターが支える体制づくりが必須である。同大学の活動と棚田の保全との因果関係は明確に示されていないが、棚田とこれを耕作する先住民に光を当てた教育研究活動は質量ともに傑出しており、そのユニークな仕組み全体がイフガオ棚田の保全に対して顕著な効果を発揮しているものと十分に推定され、その社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致する。よって、棚田学会賞を授賞するに相応しいものと認められる。

(2)上岡満榮、上岡淳恵
業績名:「泉谷棚田」を地域の宝に育て、都市交流を通して磨き守ってきた
授賞理由:1999年に日本の棚田百選に選ばれた泉谷の棚田(傾斜1/3、総面積4ha、93枚)を守る農家は、上岡満榮さん(72)、上岡淳恵さん(71)のほか、満榮さんの姉の土居ナミ子さん(85)と、一人暮らしの清水善二郎さん(78)の3軒のみである。この事実のみで、同棚田が如何に逆境の中にあり、存続の危機に瀕しているかは十分に理解できる。そうしたなかで上岡夫妻は、平成11年に「泉谷地区棚田を守る会」を発足させ20年間にわたりその会長を務めたのみならず、御祓(みそぎ)集落の全校児童13名の御祓小学校の児童に、2000年から自らの棚田を農業体験の場として提供し、田植えや稲刈りなどの交流を続けているほか、同年から都市住民を対象とした棚田自然浴ツアーを毎年開催し、さらに2004年から棚田オーナー制度で農作業体験ツアーを実施して毎年10数組40名程度の参加を得ている。
 泉谷の棚田の法面は石垣と土羽が半々であるが、土羽が多い上岡夫妻の棚田はいつ訪れても手入れが行き届いている。これは、訪れてくれる人たちへの感謝を込めて年に6回の草刈りを行っているからである。ご夫妻の長男は障害を抱えており、棚田を遺したくてもそうはいかない事情のなかで、彼の将来を考え車で片道40分かけて介護施設に送り迎えしながら、高齢のご夫妻は泉谷棚田に日々命を吹き込み、誰もが感動する輝きを与え続けている。
 どんなに困難な環境においても、手を抜かず、自分たちにできる最大限のことをなし続け、あとは天の裁きを待つ。ご夫妻のそうした強い意志と覚悟は、いつの日か周りの人々を動かし引き継がれて次の展開につながることを十分に予感させるものであり、その社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致する。よって、棚田学会賞を授賞するに相応しいものと認められる。

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